彼は恋人を愛しています。
彼女と接する時のみ、彼は自己実現を図ることを強要させられません。
社会を恐れるでもなく、他者を陥れるまでもありません。そんな隙も与えず、見慣れた彼女の眼差しは、いつだって彼を闇から救い上げます。彼女の纏う仕草や声は、もはや彼の実存となり自然と身体に刷り込まれるのです。
ただひとつ。焦がれる存在、思い出す姿かたちは、彼女と重ならないのです。
彼は確かに彼女を愛しています。
しかし彼は彼女に恋をしていません。
そして彼はそのことに気付いています。
2012/03/24 royalpain
21:56